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舞様リクエスト
京介視点で、幼い頃の京介×圭志





今日はアイツが来る日だ―。

俺はこの日をとても楽しみにしていた。

「京〜、遊びに来たよ」

ガチャ、とノックも無しに扉を開けて顔を覗かせたソイツを俺は笑顔で部屋に迎え入れた。

「圭!」




神城 京介、黒月 圭志 六歳。



◇◆◇



「今日は何して遊ぶ?」

「そうだなぁ、圭は何したい?」

ベッドの縁に腰掛け、足をブラブラさせて聞いてくる圭の隣に座り、俺はそう聞き返した。

すると圭はムッと眉を寄せ、唇を尖らせる。

「聞き返すのはマナー違反だぞ」

「俺はいいの」

ジロッ、と睨んでくる圭は何だか可愛かった。

「もう!…ん〜、じゃぁさ外行こう?」

「いいよ」

二人してピョンとベッドから飛び降り、部屋を後にした。





外といっても本当に外に出るわけじゃなく、神城家の敷地内だ。

何か大人の都合とか色々あって、子供だけで敷地から外に行くのは危ないらしい。

だから圭が俺のとこに遊びに来るのは、圭の保護者が家に用事がある時だけ。

それが少しつまらない。

「なぁなぁ、京。この前作った秘密基地どう?まだバレてない?」

「バレてないよ。だって俺達が作ったんだぜ。そう簡単に見つからないって」

「そうだよな。じゃ、ちょっと見に行こうぜ」

二人してニヤリ、と顔を見合わせて笑った。

この前外で遊んだ時に、良い感じのスペースを見つけて、その時から敷地内の一角に着々と築かれていた俺達の城。

玄関を出ると、少し先に水をキラキラと噴き上げる噴水。その周りを囲むように置かれた色とりどりの花が植えられたプランター。

そして、その噴水を中心にロータリーの様にコンクリが円を描き、道は真っ直ぐ正面の門扉まで続いている。

俺達はそれらに目もくれず、家の裏側へと回った。

裏側は小道がある程度で小さな森の様になっていた。

道に添って奥へ行けば、小さな温室と薔薇園がある。

俺達は態と小道を反れて、草木が生い茂る中へずんずん入って行く。

「俺、ここに来るのすっごく楽しみにしてたんだ」

にこにこ笑いながら隣を歩く圭がそう言った。

「ここって俺んち?それとも秘密基地?」

秘密基地の事だったら何か嫌だな、と俺はもやもやした気持ちになった。

「ん〜ん。京に会うのが。だって、どっちも京がいなきゃ楽しくないし」

満面の笑みでそう言われ、もやもやした気持ちは一瞬で吹き飛んだ。

「俺も圭が来るの楽しみにしてたんだぜ」

変わりに嬉しい気持ちになって、俺も笑ってそう言い返した。

また、二人顔を見合わせて一緒に笑った。



◇◆◇



道なき道を歩いて辿り着いた先には小さな小屋。

俺達の秘密基地。

木材で造られたその小屋には大きな窓が一つあって、陽当たりは良好。

中には荷物など何もなくて、一面フローリングの床。初めは何かに使う予定だったのかと圭と一緒に首を傾げたけど、床が少し埃を被っていたから使わないんじゃない?と勝手に決めて頷きあった。

それを綺麗にして、自分達の私物を少し運び込んで、秘密基地にしたのだ。

「今日は何時までいられんの?」

「多分、夕方あたりまで…」

不満そうな顔でそう答えた圭にそっか、と俺も同じような顔して返した。

それから俺達は陽が暮れるまで秘密基地で遊んでいた。









「ん…」

寒さを感じて目を開ければ辺りは闇に包まれていた。

やばっ、俺寝てた!?

がばり、と身を起こせば隣に温かな温もりがあることに気づく。

「圭」

どうやら陽当たりが良すぎていつの間にか二人して眠ってしまったらしい。

圭は寒いのか俺にぴっとりくっついて寝ている。

すやすやと安心しきった顔で眠る圭を起こすのは少し可哀想かと思ったけど俺は起こしにかかった。

「圭、起きろ!圭!」

ぐらぐらと肩を揺すれば、うぅ〜と唸って圭が目を覚ました。

「なぁに、きょー?」

ぽやんとまだ寝ぼけてる圭は可愛かったけど今はそうじゃない。

「何じゃなくて早く帰らないと」

圭はだんだん意識がハッキリしてきたのか、暗くなった外を見てあ!と声を上げた。

「やばい…、怒られる」

「圭、早く行くぞ」

離れないようぎゅっと手を繋いで暗い道を駆け出した。

明かりの灯る玄関先に人影を見つけた俺達は二人してぎくりと肩を震わせた。

「京介、あなた何処行ってたのよ?圭ちゃんまで居ないし」

「まぁまぁ、落ち着けって姉さん。こうしてちゃんと帰って来たし、どうせ敷地内にいたんだろ。な、二人とも?」

人影は母さんと圭の父親だった。

俺達はばつの悪そうな顔してうん、と頷いた。

「よし、じゃぁ帰るか」

「気を付けて帰ってね」

その言葉に繋いでいた手に力が入った。

それに気づいたのか圭も握り返してくる。

「帰るぞ圭志」

「…うん」

繋いでいた手が離れる。

俺は離れていく温もりに少しの寂しさを感じた。

「また来いよ、圭」

「うん。また遊ぼうな、京」

そして俺達は、いつの日になるか分からない〈また〉という未来の約束をして別れた。



アイツが来る日は楽しみだけど、この瞬間はいつも楽しくなかった。

ずっと一緒にいられればいいのに…。





END.

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